高血圧のイメージ写真

喫煙は、現在でも成人の5人に1人がおこなう習慣となっています。しかし、以前からたばこが健康を害することはよく知られています。最近のメタアナリシス(多くの論文をまとめたもの)によると、心筋梗塞などの心血管病や肺がん、膀胱がんなどの悪性腫瘍だけではなく、胆石や逆流性食道炎などの消化器疾患や骨折・リウマチ性関節炎などの筋骨格疾患や糖尿病、多のう胞性卵巣などの内分泌疾患など、数多の疾患の原因となることが判明しています。

加えて、受動喫煙(他の人が吸っているたばこの煙を吸入する場合)の問題もあります。受動喫煙を強いられる方は心血管イベントが28%増加し、子供の場合は善玉コレステロールの減少および血管機能が低下することが報告されています。

タバコの種類

紙巻たばこ

ニコチン、タール、一酸化炭素が含まれる一般的なたばこです。

加熱式たばこ(タバコ葉を燃焼ではなく、加熱させて蒸気を吸引する)

ニコチンを含みます。ニコチン量は紙巻きたばことほとんど変わりません。タールは紙巻きたばこの70%程度と言われています。紙巻きたばこによる健康リスクの低減になるとは到底言えない量の有害物質が含まれています。

電子たばこ(タバコ葉を使用せず、装置内の液体を加熱させて蒸気を吸引する。)

日本で発売されているものはニコチンを含みません。しかしホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどの発がん物質が含まれ、健康被害の可能性が指摘されています。若年者での脳の発達を抑制する可能性があることもわかっています。長期使用での健康へのリスクについては現在検証中の段階です。

ニコチン依存症のメカニズム

ニコチンは内分泌かく乱物質として有名です。ドパミン、セロトニン、ノルエピネフリンといったホルモンはニコチンを摂取すると分泌され、気分の高揚を起こします。ただし、血管収縮作用や心拍数・血圧の上昇効果なども同時に発揮し、心血管の負荷となります。また、ドパミンは大脳辺縁系を制御するホルモンですが、この制御は「脳内報酬系」と言われ、多幸感などの感情を起こします。覚せい剤や麻薬もこの「脳内報酬系」に作用することがわかっており、ニコチンはこれらの薬物と同様のメカニズムで身体的・精神的依存を生み出します。

禁煙外来

ニコチン依存症と診断され、禁煙を希望される際には、ニコチン貼付剤を使用して、体内のニコチン濃度を上げることで、離脱症状を回避します。医院で処方されるものは、市販の貼付剤より高濃度であるため、離脱症状が起こりにくくなっています。12週間かけて少しずつニコチン含有量を減量し、最終的にゼロにするのが目標です。以前はバレニクリン(チャンピックス®)という内服薬が使用されていたのですが、少量の発がん物質が検出されたため、現在は販売停止となっています。

外来では、一酸化炭素濃度をモニターしながら、禁煙の補助を行っていきます。一般的には、初診、(初診日から)2週間後、4週間後、8週間後、12週間後に受診していただき、診察を受けていただきます。来院が困難な方は、2週間後、4週間後、8週間後はオンラインでの面談が可能です。

禁煙に少しでも興味のある方は、是非一度ご相談ください。