- 2025年4月23日
1型糖尿病のはなし
今日は先日の研究会で聞いた1型糖尿病の治療に関する話をします。
1型糖尿病は多くの場合、自己免疫(自分の体の中に正常な膵島細胞を壊してしまう抗体ができることによる)の病気で、子供から大人まで発症する可能性があり、一度発症するとインスリンによる治療が一生必要になる病気です。
ある論文の結果が紹介されていました。1型糖尿病患者さんの寿命は裕福な国だと長くて、貧しい国だと短いことがわかっています。10歳で1型糖尿病を発症した場合、裕福な国の平均寿命は61歳、最も貧しい国の平均寿命は13歳ということがわかっています。同じアジアで比較してみても、日本は平均69歳、お隣の中国では46歳、インドネシアでは26歳の平均寿命でした。
Lancet Diabetes Endocrinol 2022; 10: 741–60
1型糖尿病の治療に関するテクノロジーはどんどん発達しており、インスリン頻回注射やCGM(持続血糖モニタリング)、そしてSAP療法(CGMセンサー連動ポンプ)があります。最新のポンプに搭載されたハイブリッドクローズドループシステムでは血糖値に応じて基礎インスリンが調整され、さらに安定した血糖コントロールを実現することが可能になりつつあります。研究会では8歳の1型糖尿病のお子様の症例が提示されていましたが、血糖値だけでなく、親御さんの身体的・精神的負担も軽減されており、同じ子供を持つ親として、とても感銘を受けました。

問題があるとすれば、これらの治療には高額なコストが患者さんの負担になることです。最も一般的な頻回インスリン注射をおこなっている方でも、診察代、薬代など合わせるとひと月に¥12000-15000かかるのに対し、ポンプシステムを導入すると、ひと月¥30000前後にもなります。良好な血糖コントロールは患者さんの合併症発症を予防し、生活の質を高め、寿命を長くします。ドイツやフランスなどではインスリンポンプでの治療に追加の料金がかからない保険制度になっているとのことでした。日本も国や自治体が一日でも早く1型糖尿病患者さんの治療をサポートしてくれるような助成を実施していただきたいという気持ちとともに、いち開業医の立場からもなにかできることがないかと考えさせられる機会でした。患者さんや他の糖尿病専門医の先生方と協力して、国や自治体へ訴え続けていくのが重要だと思いました。